Bloto & Ion D/Atmosfera (LP")
2025年9月、ブカレストのフロレアスカ地区の裏通りで、これまで私達が知っていたBlotoは一時的にその姿を消しました。しかし、これは終わりではなく、新たな始まり、意識的な変革で、中核メンバーはそのままに、バンドはルーマニアのオルタナティブ・シーンを支える柱的存在であるIon Dを迎え入れ、ラインナップを拡大。この動きが、彼らのキャリアにおいて最も画期的なプロジェクトのきっかけとなったのです。その成果が、Astigmatic Recordsから2026年にリリースされるアルバム”Atmosfera”です。
BlotoとIon Dのコラボレーションは、最早やヴロツワフの路地裏に留まらず、ブカレストのコンクリートやサイケデリックな世界、そして”台頭する東欧”という変容の共有体験そのものです。その共有体験はシンセサイザーを主体としたサウンドへと昇華され、現地の民俗文化からインスピレーションを得た音楽”Atmosfera”のテクスチャーの中で、ラドゥ・ジュデ監督の映画のように、ポスト資本主義的な力を余すところなく放ちながら共鳴しています。本作は”ジャズ”というレッテルをあっさりと捨て去り、むしろ”ジャズの廃墟に生まれたジャズ”となった作品です。その代わりに、Ionが”イースタン・オリエンタル”と漠然と呼ぶ、トランスのような、分類不可能なサウンドがそこにあります。
”Atmosfera”の音楽的基盤は、Blotoのディスコグラフィーの中でも類を見ない、ジャンルを融合させた”るつぼ”のようなサウンドで、エレクトロ、テクノ、ハウス、ダーク・ダブの生々しい要素が、ヒップホップの脈動と交錯しています。この機械的なフレーム・ワークは、トランスの影響を受けたアフロビートや、幻想的なアンビエントのテクスチャーから、ルーマニアのマネレへの大胆なオマージュ、陽光溢れるバレアリック・サウンドに至るまで、世界各地からの影響によって更に豊かに彩られています。