Bacao Rhythm & Steel Band/Big Crown Vauits Vol.4
オーシャンブルー・スモーク・ヴァイナル !
ドイツ・ハンブルク出身の謎のBacao Rhythm & Steel Bandは、2024年にフランス映画”Anatomy of a Fall”がアカデミー賞脚本賞を受賞したことで大きな話題を呼びました。Bacaoによる50 Centの”PIMP”のカバーが、映画の中で頻繁に使用され、ストーリー展開においても重要な役割を果たし、映画の成功の代名詞となったからです。その後のアカデミー賞授賞式では、監督のジュスティーヌ・トリエットが受賞式でステージに登場した際に演奏するため、オーケストラピットに初めてSteel Bandが登場しました。こうした活動によってBacaoには多くの新規ファンが生まれ、”PIMP”のストリーミング再生数は4,000万回を突破しました。ご存知の方も多いかもしれませんが、この曲は2008年にバンドリーダーのBjorn Wagner自身のレーベル”Mocambo”から初めてプレスされ、アンダーグラウンドで人気を博しました。そして、50 Centのヒット曲の元となったサンプル・ソースと間違われることも少なくありませんでした。
賞賛や国際的な名声はさておき、”PIMP”は文字通りBacaoの氷山の一角に過ぎません。2014年にBig Crownと契約して以来、4枚のフルレングス・アルバムと、世界中のDJの定番となった7インチ・シングルの山で、多作な音楽活動を続けてきました。 コンスタントなリリースと膨大なカタログにも関わらず、レコーディング・セッションは毎回、アルバムに収まりきらないほどの成果が生まれ、数曲がレコーディング・ボールトに眠っています。 この”Big Crown Vaults Vol.4”では、その金庫室を開け、それらの楽曲の全て(というか、殆ど)を正式にプレスし、リリースします。
アルバムはBob Jamesの超クラシカルなブレイクビーツ”Nautilus”のカヴァーで幕を開けます。彼らはオリジナルに独自のアレンジを加え、ヒップホップやブレイクビーツ愛好家にとってマスト・アイテムに相応しい仕上がりを披露しています。アクセルを踏み続けたまま名曲、Khruangbin”Maria Tambien”をBRSB流にアレンジし、彼らの特徴であるボトム・ヘビーなドラムが曲のエネルギーを全く新しい場所へと導いています。再解釈の為の素材を選ぶ際、木箱の奥深くまで掘ることで悪名高い彼らが次に挑むのはRoyce da 5'9"のJ Dillaがプロデュースした”Let's Grow”。元々は”PIMP”の初回プレスのB面だった曲(又、デビューアルバム”55”の初回限定2LPにも収録)を今回、”PIMP (Version)”として収録、メロディカとテープ・エコーをふんだんに使い、Bacaoのオリジナル・レコーディングに本格的なダブ加工を施しています。Jackson 5の”Great To Be Here”をカヴァーしてテンポとファンクを上げ、Billy Jonesの”Lookout Baby (Here I Come)”では再び知られざる名曲へと深く潜っていく。Bacao Rhythm & Steel Bandの新しいアルバムの魅力の一つは、彼らがどの曲のカバーに挑戦するのかを知ることだと思いますが、彼らがどんなオリジナル曲を作り上げるかも同様に興味をそそることでしょう。BCR Vaults Vol. 4には1曲しか収録されていませんが、オリジナル曲”Kaiso Noir”は、B-BOYのブレイクとジェームズ・ボンドの音楽をミックスしたような、アップテンポで観客を魅了するナンバーです。
このコレクションは2008年から2023年までの楽曲を網羅し、ヒップホップ、ジャズ、ソウル、ポップスなど、様々なジャンルをBacaoの視点から捉えています。バンドは既に5枚目のフルレングス・スタジオアルバムの制作に取り掛かっており、このコンピレーションは、それが届くまでの間、ファンを繋ぎ止めるうってつけのものとなるでしょう。