Various Artists/1st Unit: Underpass (12")
Junichi Soma、Shuji Wada、Katsuya Sayoによる日本のハウス初期作品のリイシュー、ライナーノーツ付き。
全ての音楽的な動きには、火を付ける為の火種が必要である。日本のハウス・ミュージックの場合、その火付け役は東京、六本木にあるThe Bankの先鋭的なレジデントDJ達によってもたらされました。1989年、この画期的なクラブの1歳の誕生日を記念して、相馬純一、和田修二、ストロング勝矢AKS勝矢佐代の3人のDJによる初プロデュースを収録した12インチEPがリリースされました。
日本で最初に制作されたハウス・ミュージックのEPの一つと言われている1st Unitは、公式にはリリースされる事はありませんでした。その代わり、1000枚のうち500枚はThe Bankの最初のバースデー・パーティーで配られ、残りは地元のレコード店ではなく、会場内のショップで販売されました。あれから30年、この12インチがRush HourのStoreJPNシリーズからついに世界初リリースされる事になりました。
このレコードのルーツは、常に入れ替わるDJの顔ぶれに自由な裁量を与え、好きなプレイをさせるというThe Bankの姿勢にある。当時の東京のナイトクラブでは珍しく、音楽は厳密に決められたプレイリストに沿って提供されるのが普通だったのです。1989年当時のThe Bankでは、ヨーロッパのボディ・ミュージックや、パラダイス・ガレージでのLarry Levanのセットから連想されるようなポスト・ディスコのニューヨーク・プロダクションがよく聴けただけでなく、アシッド・ハウスも聴く事が出来ました。
この先鋭的なサウンドのブレンドは、会場のユニークな内装(ロンドンの銀行内部をモデルにしており、入場料を受け取るためのキャッシャーの窓口がある)と相まって、The Bankは若いパーティー好きやセレブリティ、先鋭的な日本のミュージシャン(坂本龍一は毎週訪れていたと言われている)にとって定番のスポットとなった。
クラブの誕生日をユニークなレコードで祝うとなれば、The Bankのオーナーが最もエキサイティングなレジデントDJ3人に依頼するのは理にかなっていた。1st Unitという集団名は、彼らのサポートHeigo TaniとJun Ebiによって、3人のレジデントDJ全員がスタジオ未経験のデビュー組であるという事実を反映して選ばれました。
このリイシューで証明しているように、この音楽は時代を超越し、魔法のようであり、時折ひねりはあるものの、当時のアメリカのハウス・プロダクションのサウンドを忠実に再現しています。佐野克也のEPオープニングを飾る楽曲”I Need Love”は、ジャッキングなTR-909ドラム、うねるアナログ・ベース、幻想的なJUNOシンセサイザー・コード、そして刺激的なボーカル・サンプル等、当時のLarry Levan作品にひねりを加えたようなサウンドです。
シカゴのアシッド・ハウスからの影響は、相馬純一の”Ubnormal Life”でも見られ、その変わったタイトルには、意図的なスペルミスが含まれていると彼は言います。休む事のないドラムマシンのハンドクラップ、甘美なコード、上昇と下降を繰り返すメロディックなモチーフによって前進するこのトラックは、エネルギッシュで高揚感のあるご馳走です。
おそらく当時、3曲の中で最も影響力があったのは(少なくとも日本国内では)、同じくスペルを間違えた和田修二の”Endless Load”だと思います。マリンバ・スタイルのリード・ライン、トライバルなドラム・パターン、ドリーミーなコード、ジャズ・ファンクの影響を受けたベースが組み合わされたこのトラックは、その後の更に成功し、更に良く知られる日本のディープ・ハウス・トラックの緩やかな青写真となりました。