Miles/Vault (LP")
意識して行う過程に潜む無意識の働き、
ダブ・テクノとその派生ジャンルは、美的な観点からも技術的な観点からも、私にとって欠かせない要素です。
私はレコーディング・セッションの度に、ダブにインスパイアされたジャムから始めます。1996年に初めて録音した曲は、Korg X3と、Gary Howellから借りたIbanez PUE5だけでPhylyps Trakを再現しようとした試みでした。それはジャム・セッションへの素晴らしい入門となり、熱意のアクセルを思い切り踏み込みながら、ノイズ、ディレイ、サチュレーションという基礎を探求しました。
こうした練習ジャムは、ある意味ではカタルシスをもたらしてくれます。何度も何度も最初の一歩を踏み出すことで、セッションごとに前進出来るだけでなく、自分自身と機材の両方の”回路を温める”効果もあります。
Basic Channelの天才性は、しばしば批判される機械自体の動作音さえも含む、食材を余すところなく使い切り、無駄を一切出さない、農民料理の天才性に似ていることに気づいたとき、それは私自身の主観的な成長にとって転換点の瞬間となり、もはや何か刺激的なものをただ模倣するだけではなく、ここで学んだツールを音楽の他の分野に応用することで、強い影響の流れから解放され、新しいツール・セットを使って他の分野へと進むことが出来ました。
ダブ :
現代音楽、そして私自身の制作活動において、ダブの先駆者達の重要性を過小評価してはいけません。しかし、私の最初のインスピレーションの源となったのは、謎めいたレーベル・デザインで過激なテクノのバリエーションをリリースしていた2人のドイツ人でした。彼らは後に、自身のインスピレーションの源を”Wackies”の再発盤、又は”Rhythm & Sound”や”Burial Mix”といったサブレーベルでの言及を通じ、リスナーに示した為、私は遅れてスタートし、過去に遡るような形で歩んできたのです。
BCの”Quadrant Dub”にもその影響が見て取れる、フェーダーを下げても音が漏れ出ているMikey DreadやLee Perryのライブ・ミキシングや、文字通りミックスに放り込まれたような大胆なセンド・エフェクトから学んだことは、”ラフ”なミキシングこそが、レコーディング生命力や独自性、そして最高に正しい”間違い”を吹き込むことが出来るのを学びました。” Basic Channels”を振り返ってみると、理解すべきルールこそが、破るのに最も相応しいルールでもあることに気づかせてくれた部分は、ほんの僅かでした。
ミキサーをレッドゾーンまで押し込む。
テープ・ディレイのノイズを増幅する。だって、最高にカッコいいんだもん。
キックが大きすぎてミキサーで上手くミックス出来ないから、疑似サイドチェーン・エフェクトをかける。
今すぐ、今すぐ、そして今すぐ、ディレイユニットに”Send”ノブを全開にする。
無頓着さ。
ノイズ :
それらのレコードを特徴づける本質的な”ノイズ”という要素を理解した途端、それは当時私が手探りで探求していたオルタナティブ・ノイズ・ムーブメントへの光道しるべとなり、明らかなそれらとの繋がりや糸口でもあることが分かりました。
イギリスのインダストリアル、ポストパンク・シーン(、his Heat、TG、A Tent、F.E.であれ、米国のノイズ・シーンにおける多作な作品群、Wolf Eyes、Live & Shave in LA、そしてその系譜を遡ってChromeの”Alien Soundtracks”に至るまで、私は遂に、テクノとこの”何でもあり”の音楽の片隅との繋がりを発見したのです。
私の経験上、ノイズという音の世界からのこのインプットは、サウンド・アーティストにとって極めて重要な一歩です。そのルーツはStockhausenやPierre Henryに遡り、そこから広がっていったもので、それ以来、何千人もの冒険心溢れる先駆者立によって利用され、歪められ、ねじ曲げられてきた、この流れの中で、私は今、ハイブローとローブローを分ける境界線が、実は頭から心へと情報を運ぶ動脈そのものであると理解しています。
”Vault”は、私がソロでレコーディング・セッションする度に先行して行う即興演奏の中から厳選した作品集です。30年間にわたり、私はこうした”ワークアウ”」を何百回も録音してきました。これらは決して本格的な作品として意図したものではなく、ただ純粋に楽しむ為の一時ですが、何よりも重要なのは、練習の一環として捉えていた”時間”と”空間”がここに収められているという点です。
目的は常にウォーミングアップですが、時には意図せず予期せぬ方向へ進むこともあります。意識的な選択ではなく、前回のセッションで機材に残されたランダムなサンプルによって、焦点や方向性が変わってくるのです。こうした無意識的な要素が、音に独特の雰囲気や色彩を与え、特別なもの、少なくとも制作者にとって特別なものとなる”ポジティブなミス”を生み出すことがあります。
私の信条である”全てを記録する”という姿勢が、こうしたジャムセッションを整理し保存する上でかけがえのないものとなっていることは、私自身も十分に認識しています。一方で、このプロセスにおける”気楽な”姿勢、何しろ、ただのウォームアップ・ジャムですから、、、真面目に取り組むことでは決して得られないほどの楽しみをもたらしてくれます。例えその瞬間にピンとこなくても、録音しておきましょう。数年後には、それがぴったりとハマったり、思いもよらなかった形で意味を持つようになるかもしれません。
- Miles
Mastered by Miles, cut by Rashad Becker.
Art by Lucas Dupuy.