Philip Glass/Music With Changing Parts (2xLP")
アメリカの偉大な作曲家Philip Glassが初のアルバムをリリースしたのは、既に30代半ばになってからで、しかも彼が自らダブルLPをプロデュースしたからこそ実現したことです。”Music With Changing Parts”は、1971年に彼が自ら立ち上げたレーベル”Chatham Square”からの最初のリリースとなったアルバムです。
この時点では、Glass最初のオペラ”Einstein on the Beach”が初演されるのは、まだ5年後のことです。しかし、”Changing Parts”には、既に彼の音楽語彙の多くが花開いているのが聴き取れます。それは軽快なアルペジオ、電子楽器とアコースティック楽器の融合、 人間の声による長く響き渡るドローン、パルスへの強い拘り(これは同時代の作曲家Steve Reichとも共通する関心事です。)、そして反復に内在する恍惚的な可能性などです。
このアルバムには、Philip Glass Ensembleのオリジナルメンバー、作曲家本人を筆頭に、Jon Gibson, Dickie Landry, Art Murphy, Steve Chambers and Robert Pradoがファルフィサ・オルガンや木管楽器を演奏する他、Barbara Benaryがエレクトリック・ヴァイオリンを担当しています。
Glassが自伝”Words Without Music”で述べているように、彼はこの録音の初回リリース資金として、Hebrew Free Loan Society(旧世界からの移民が米国に到着した際に支援を行うことを目的とした団体)から500ドルの無利子融資を受けています。Glassx自身は移民の孫に過ぎませんでしたが、結果、この融資は同団体の設立趣旨からそれほどかけ離れた事とは言えません。というのも、”Changing Parts”は、後に”ミニマリズム”として知られるようになる新たな音の世界を切り拓く一助となったからです。
Chatham Squareはその後、GibsonやLandryなど、Glassの仲間である他の作曲家達のアルバムもリリースします。レーベル名は、Landryがスタジオを構え、アンサンブルがリハーサルを行っていたマンハッタンの交差点に由来します。
1937年にボルチモアで生まれたGlassは、シカゴ大学を卒業後、僅か19歳でジュリアード音楽院に通う為にニューヨークへ移り住んだ。ダウンタウン界隈の中心人物として、彼は恐らく彫刻家のRichard Serraや映画監督のJim Jarmuschといった人物、つまり、完全に独自のやり方で文化界の主要な人物となった異端児達と同列に捉えることが出来るでしょう。
アナログ盤では初となるこの再発は、オリジナルのサイドブレイクとゲートフォールド・スリーブを忠実に再現しています。