Ghia/Tender Rain (LP")
ソウルフルなドリーム・ポップ、プロト・トリップホップ、あるいはダウンテンポ・ジャズとでも呼ぶべきか、、、”Tender Rain”は、大ヒット作”This Is”に続くアルバムで、Ghiaならではの紛れもないサウンドの魔法を再び届けてくれます。今回のリリースは、バンドの未発表のボーカル曲の数々とインストゥルメンタル曲を収録、その全てが彼ら特有の、ゆったりとし、ほぼメディテーションな雰囲気で包まれています。そして、収録曲の殆どは1990年代初頭のものですが、初期デモバージョン、”New Love”と”Teardrops in Your Eyes”は、1980年代後半まで遡る可能性があります。
アルバムの冒頭を飾るのはタイトル曲”Tender Rain”で、滑らかなボーカル・ジャズのハーモニーが、ソウルフルなポップの要素と自然に溶け合っています。この曲は元々、1993年にドイツの著名なギタリスト、Ulli Bogershausenが主宰する小さなレーベル、MikadoからCDでのみリリースされたもので、バンドによると、この曲はまずMIDI機器とタスカムの16トラック・レコーダーを使ってプリレコーディングされ、その後スタジオで、伝説的なドラマー、Mickie Stickdorn(Carsten Bohn's Bandstand、Cyklus、Elephant、Lake)によるドラム、Corinna Ludzuweitによるパーカッション、そして最後の仕上げとしてLisa Ohmの素晴らしいボーカルが加わり、完成したとのことです。
当時、Mikado社はラジオや映像作品への使用を目的としたインストゥルメンタル楽曲も探しており、彼らはコンピレーションCD用に”Tropfstein”という楽曲を選び、更に他にも楽曲を提供して欲しいと依頼してきました。Frank Simonの記憶によると、それに応えて”und recken ihre schlanken Glieder”(直訳すると”そして細い手足を伸ばして”)がこのプロジェクトの為に特別に作曲されたとのことです。 この2曲は、現在は入手困難となっているMikadoのコンピレーションCDに、z. Zt.という別名義(z. Zt.は”zur Zeit”、”現在”または”最近”の略)で収録されています。
この時期には、同様の趣を持つ作品が更にいくつか制作されており、その中には未発表曲である”Auf unserm grunen Sofa”、”Reise bei Nacht”、”Was ich Dir noch sagen wollte”等が含まれ、それらの楽曲は、滑らかでジャジーなピアノの旋律に、アンビエントやニューエイジの要素を織り交ぜた、美しく作り込まれたダウンテンポの楽曲です。”Auf unserm grunen Sofa”は取り分け際立っており、ダウンテンポ好きなら誰もが共感出来るでしょう。そしてLutz Bobergは、それらのレコーディングの多くが、即興的なアイデアと創造的な勢いに後押しされ、スタジオでのたった1日、午後の間に録音されたと振り返っています。
”Teardrops in Your Eyes”、”New Love”そしてGhiaでの楽曲”What's Your Voodoo?”の魅惑的なDark Spirits Mixといった楽曲で、シンガーのLisa Ohmは、その澄み切った魅力的な歌声でソウルフルなポップ・パフォーマンスを披露しています。前途に述べた”Mikado”のサンプラーに収録されていた3曲目の楽曲”Change Your Sex”は、1980年代後半のファンク寄りの曲調で、当時のラジオやDJをターゲットに制作され、そのテーマは当時としては比較的大胆で、”悩みを解消するために性転換を考えている人物”の物語を描いています。
”This Is”や”Curacao Blue”と並び、”Tender Rain”も又、このバンドの作品の再評価において欠かせない一章となっています。制作から30年以上が経過した今でも、これらの楽曲は驚くほど新鮮に響き、1990年代前半から半ばにかけてのトリップホップの台頭を多くの点で先取りしていた独自のスタイルを具現化しています。