Gigi Masin/Movement (LP") Silver Vinyl
2023年にGreg FoatとMoses BoydとのコラボレーションLP”Dolphin”でジャジーなライブラリー・サウンドを披露したヴェネツィア出身の巨匠、Gigi Masinが、自身の代名詞とも言えるアンビエント・サウンドへと回帰します。そして、本作”Movement”は、2020年の”Calypso”以来となる最新のソロ・フルアルバムで、Sacred Bones Recordsからのデビュー作でもあります。創造的な再発明とリズミカルな動きに支えられ、彼はメランコリックなエレクトロニック・サウンド、テクノ風のロボット音、境界線上のグルーヴィーな雲の風景、そしてアンビエントな深淵の水の世界を、シームレスに行き来します。
キャリアをスタートさせた彼は世に知られることは無く、1986年にリリースしたデビューアルバム”Wind”が深夜のラジオ番組を通じて徐々に自然な形でファン層を築き上げ、その後、”Clouds”がBjorkやPost Maloneといったアーティスト達にサンプリングされたことで、その人気は更に高まります。そして、現在ではOneohtrix Point Never、Devendra Banhart、Caroline Polachek、そして故Kenny Wheeler等が彼のファンを自認しています。
新作アルバム”Movement”は、アンビエント界の巨匠達の中でのMasinの地位、彼の止む事が無い芸術的野心、そしてささやかだった始まりから飛躍的に成長してきたシーンに対する彼の抱負を映し出しています。このLPは又、自然界における動きと、音に対する人間の身体的な表現という、文字通りの”動き”への賛歌でもあります。Masinは、一般的な意味でのダンスミュージックの役割ではなく、”鼓動する愛に満ちた心臓を持った、ダイナミックな音楽”として、動きに合わせて聴くアンビエント・ミュージックを作ることに尽力しました。アンビエント・ミュージックが持つ”一人でのリスニング”や”冷淡な物知り顔”と結びつけられてきたイメージを覆し、Gigiは外へと目を向け、単に心だけでなく体にも響く、身体感覚に訴える何かを表現しようと挑んでいます。
”Bed on Mars”は、タイトル通り、Masinの新たな探求心を象徴した楽曲で、そのコズミックな雰囲気は、恐れを知らないまま未知の惑星で目覚める感覚を呼び起します。一方、”Lost”では、心に響くシンセサイザートランペットの、宙に浮いたような曖昧な感覚が、未知の海を漂っているかのような感覚を与えます。更に、型破りなビートを探求した”Deception Dance”は、天上のテクノ・ファンクで、まるでSun ElectricがCarl CraigやKraftwerkとジャム・セッションをしているかのようです。そして、”Golden”の明るく輝く光は温かさを放ち、Gottschingのバレアリック・クラシック”E2 E4”のボサノヴァ・ヴァージョンといった趣です。
妻を長年の闘病の末に亡くし、洪水で音楽のアーカイブを失ったにもかかわらず、Gigiは純粋な心と前向きな姿勢を保ち、美の追求に魂を注ぎ続けています。ゆっくりとしたスタートながらも着実にキャリアを築き上げてきたMasinの最新作”Movement”は、彼が真のアンビエント・アーティストとしての地位を確固たるものにしていることを示した作品と言えるでしょう。