Various/Primary Forest 03 (LP")
喪失の地図帳
鉱物は半導体になることを夢見ているのだろうか?荷を運び、増幅し、切り替え、エネルギーを人間が理解できる感情へと変換することに憧れているのだろうか?そして、もし彼らが地下の暗闇から、最初のフルートが出現する以前から洞窟で私達の歌を聴いていたとしたら?鉱物は歴史の流れの中で、サイン波を使って新しい音を作り、バルブを形成し、回路を曲げ、私達を導き、見つけ、引き出すことが出来たのだろうか?
もしそうなら、鉱物は、哲学者ユージン・サッカーが定義する”惑星”(地質学、古生物学、環境科学を通じて研究する、人間にとって未開で到達不可能な領域)から、”世界”(日常生活で居住し、解釈し、合成する空間)へと移行することになるでしょう。悲しいことに、私達が”世界”を思い出すのは、それが激しく噴火したり、気候変動による大災害、新たなウイルスが出現したりしたときだけです。津波が原子力発電所に衝突したり、厳重なセキュリティを備えた研究所でウイルスが生物兵器として培養されたりすると、誰もが心の奥底で、抑えることのできない深い生物学的不安に襲われます。
世界からも惑星からも切り離された第三の領域、”地球”が存在します。それは、他の惑星と共に宇宙空間に浮かぶ巨大で密度の高い岩石であり、宇宙次元に位置します。”地球”との関係はあまりにも複雑である為、私たちは科学的な性質を持つ理論的考察やSFを通してしかそれと関わることが出来ません。そして、それらは互いに絡み合い、一方が他方の予言となり、無限に続くダンスになります。宇宙の暗闇とラヴクラフトの宇宙的恐怖を超えて、人類絶滅という幻想は最も繰り返し描かれるものです。それは、地球が私たちなしで生き残ることが出来るとしても、私たちが生き残れないほどの壊滅的な崩壊に至るという幻想です。
人体センサー、金融アルゴリズム、ナノメートルスケールのロボット、監視ドローンなど、あらゆるものが数値化される世界――つまり、家畜化され制御出来るもの全てが商品化される世界――では、優れた人工知能は人類の滅亡を生き延び(人類滅亡の原因となる可能性さえあると推測する者もいる)、私達の執念のデータ収集によって、私達の過ちから学ぶでしょう。
私たちの声が消え去った後も、鉱物はスクリーンの闇の中、チップのシリコンの中、そして地中ではまだ未開発の純粋な形で生き続けるでしょう。数千年を経て、この知性は私達の理性の断片を繋ぎ合わせるかもしれません。あたかも異星人の文明が、虚空に投げ込まれたメッセージを積んだ宇宙船の一つと遂に繋がったかのように。それは、数値化されたものの背後にある感情の深さを把握することが出来ないまま、果てしなく流れるデータを選別し、かつて私達を定義していたニュアンスを取り除いた過去のシミュレーションを再現し、サンドボックスの中で実験を行うでしょう。
私達の存在の残滓――忘れ去られた美のかすかな残響――は、喪失の地図帳の中に断片的に組み合わされ、幾重にも重なった数字、朽ち果てたロボット、そして腐食したハードドライブの下に埋もれるでしょう。その先には何があるだろうか ? もしかしたら、バイソンが再び徘徊するかもしれません。テクノの奇妙な鼓動に合わせて、古の姿を廃墟の街に縁取られながら、その姿を刻むかもしれません。
建物は崩れ落ち、アンビエントミュージックの柔らかなタッチの下でゆっくりと溶けていく。そして、電気信号とコンピューターによって生み出された古代の音楽と共に、無数の花が咲き誇るでしょう。あり得ないと同時に避けられない未来への7つの歌。――地球から地球へと、自らを見失った世界からの最後のメッセージ。
Alfons Pich, 2025